住宅の部位の名称は、建築業界の専門用語が目立つため理解しにくいものです。今回は、戸建て住宅の部位の名称と役割をわかりやすく解説します。
「住宅の部位で気になる点があるけど名称がわからない」「見積もりをしたけど工事項目の名称の意味がわからない」といった方は、ぜひ参考にしてみてください。
屋根まわりの部位には以下のような名称が付いています。それぞれの役割を解説します。
破風・破風板とは、屋根先端部の「への字」状の板材を指します。破風の役割は、風や雨水の吹き込みやを防いだり、延焼しやすい屋根裏へ炎が燃え上がるのを防止することです。
鼻隠しは軒先に設置される横板です。鼻隠しの役割は、屋根内部への雨風の侵入防止です。また、湿気やカビなどのトラブルから守る役割も果たします。
ケラバとは、切妻屋根や片流れ屋根の外側から出っ張っている部分の内側で、かつ雨桶がついていない部分を指します。
ケラバの役割は、直射日光や雨水の吹き込み防止です。デザイン性を重視してケラバを出さない家もあります。
軒天は屋根の軒先の裏側にある天井部分のことです。軒天井や軒裏などとも呼ばれています。
軒天は、雨水や強風から外壁を守る目的で設置されます。また、建物の印象を変える部分でもあるため、家のイメージに合わせて色や柄を選ぶ方もいます。
大棟は、屋根の頂上にある水平な部分を指します。大棟部分は雨風の影響を受けやすく雨水も浸入しやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。
隅棟・下り棟とは、寄棟屋根や入母屋根で四方の角に向かって伸びている棟部分になります。隅棟は、各方面の屋根を繋ぐ役割を果たします。
建物の経年劣化や自然災害で影響を受けやすい部分なので、大棟と同じく定期的なメンテナンスが重要です。
ドーマーは屋根から突き出した窓のことです。採光や通気を目的として設置されます。
ヨーロッパ建築にみられる独特な外観を好む方や、屋根裏やロフトがある建物にお住まいの方から評価されています。一方で、ドーマーの設置によって屋根の構造が複雑になり、雨風の影響を受けやすいデメリットもあります。
雨樋周りの部位の名称と役割を解説します。雨漏りや建物の寿命と関係が深いため、異常を感じたら早めに専門業者へ相談しましょう。
雨樋とは、雨水を集めて排水する為に設置される筒状の建材です。雨樋で雨水を軒先で受け止めることにより、外壁を濡らさずに雨水を排水できます。
雨樋がない、もしくは破損していると外壁が汚れたり、腐敗してしまうリスクが高まります。
軒樋・横樋とは、屋根の軒先に横向きに設置された筒状の建材です。軒樋には、雨水を集めて地面に流す役割があります
縦樋は、集水器の下部に設置された側溝から地面に延びる筒状のチューブを指します。縦樋は水を地面に運ぶ役割を果たします。
経年劣化や雨風の影響で破損したり、チューブ内にゴミや鳥の死骸が詰まったりするケースもあるため、異常がないか定期的な確認が必要です。
這樋とは、屋根の上を這うように設置された雨樋のことです。這樋は、2階の縦桶から流れてきた雨水を1階の雨樋に導く役割を持ちます。
強風で這樋が飛ばされることによって地面に落ちた雨水が外壁を汚してしまう事例もあるので、トラブルを防ぐ為にも定期的に点検しておくと安心です。
集水器は、軒樋と縦樋の接続部に取り付けられた建材です。集水器はの役割は、軒樋で受けた雨水を縦樋に流すことです。
集水器には落ち葉やゴミが溜まりやすく、放置すると水漏れの原因となるため、定期的な清掃・メンテナンスが大切です。
外壁周りの部位の名称と役割を解説します。外壁周りの部位は、住宅の見た目や住みやすさとの関係が深いため、DIYやリフォームを検討中の方は要チェックです。
入り隅とは、2つの壁が内向きに入り合う角のことで、壁の内側の隅を指します。地震や経年劣化でひび割れが生じやすい部分なので、定期的な点検とメンテナンスが必要です。
出隅とは、入り隅と反対に2つの壁が外向きに出会う出っ張った角を指します。
入り隅とともに職人が建築物を測定する際にも使用され、入り隅・出隅を基準として測定部位までの長さを測ります。
幕板とは、ベランダや外壁に付属する板状の装飾材のことです。主に外壁の1階と2階部分の間に設置されています。
幕板は、外観のデザイン性にも大きく関わります。例えば、ツートンカラーでおしゃれな印象にしたり、単調な色合いを用いて落ち着いたイメージにしたりと好みに合ったカラーを選ぶことができます。
庇は、家屋の窓や出入り口の上部に設置する小型の屋根になります。
庇の役割は、直射日光や雨風を防ぐことです。庇には断熱効果があるため、エアコン代の削減にも役立ちます。
雨戸とは、窓の外に設置されている板戸のことです。雨戸は雨風の侵入を防いだり、防犯対策とった役割を持ちます。
また、雨戸の代わりに金属製のシャッターを用いる家庭もあります。金属製のシャッターであれば防火対策にも繋がります。
戸袋とは、雨戸を複数枚収納できる場所を指します。戸袋は雨戸を保護して、雨戸が劣化するのを遅らせる役割があります。
古民家や和風住宅との相性が良く、素材はアルミ製やスチール製の他、木製や銅製など様々です。
矢切りは、外壁と屋根の間の三角形のスペースのことです。矢切りには、屋根を支えたり湿気を逃がすなどの役割があります。
2003年以降に建設された物件では、矢切り部分に換気を目的とした通気口が付属しています。
水切りとは、外壁の下部を囲んでいる「仕切り」となる部分です。水切りは、外壁の汚れや室内への雨の侵入を防ぐ役割を持ちます。
水切りが劣化すると、建物の土台に雨水が入り込み、建物自体の耐久性が低下する原因となってしまいます。水切り部分にサビやひび割れがみられる場合は、専門業者に相談しましょう。
ベランダやバルコニー・陸屋根の部位の名称と役割を解説します。聞き覚えのある親しみやすい用語もありますが、意味を混合しやすい点に注意しましょう。
ベランダは、建物の外に張り出した屋根のあるスペースを指します。
賃貸戸建てやマンションにお住まいの場合、規約によって「ベランダを共有部分とするか専有部分と認めるか」が異なります。例えば、ベランダでの喫煙や避難はしごの扉の上にモノを置く行為、ゴミを放置する行為を禁止する物件もあります。
バルコニーとは、建物の外に張り出す屋根のないスペースのことで、原則2階以上に設置されています。ベランダとバルコニーは混合されがちですが、大きく異なる点は屋根の有無です。
さらに、下階の屋根を利用して屋上に設置されたバルコニーは「ルーフバルコニー」と区分されます。
笠木は、ベランダや屋上の腰壁上部に設置された部材です。笠木は雨水の浸入を防ぎ、雨漏りや建物の劣化を抑える役割があります。
笠木に隙間や破損がみられる場合は雨漏りのリスクが高まるため、シーリング材で補修したり、腐食しにくい金属製の笠木に交換するといった処置が必要となります。
パラペットとは、屋上の外周部にみられる低い外壁部分を指します。
パラペットは、接合部の強度向上や落下リスクを軽減する役割を持ちます。一方で、湿気の逃げ道が少なくなりカビやコケが発生しやすいデメリットもあります。
戸建て住宅の各部位の名称と役割を解説しました。
もちろん名称をすべて覚える必要はありませんが、少しでも知識を身につけておくことで、業者に修理を依頼する際に状況を伝えやすくなったり、見積もり内容をより理解できるようになるでしょう。
建物の部位それぞれに役割があり、劣化を放置していると雨漏りの発生や耐震性の低下などに繋がるので、定期的な点検・メンテナンスが大切です。