自然災害が多い日本ですが、雹(ひょう)による被害をニュースで見ることもあるのではないでしょうか?雹は急に降りだすため非常に危険で、屋根や外壁など建物にも大きな被害を及ぼします。
今回は雹がもたらす屋根への被害や、修理方法と費用相場などをご説明いたします。また、雹被害による修理で利用できる火災保険について、条件や申請方法などもご紹介いたしますのでぜひ参考にしてみてください。
雹とは、直径5mm以上の氷の塊のことです。5mm以下の場合は「あられ」と呼ばれます。
雹は積乱雲が原因で発生し、雷と共に降りだすことが多く、時期としては初夏や秋ごろに起こりやすい現象と言われています。
5mm以上の氷の塊が空から高速で落ちてくるので非常に威力があり、屋根や窓ガラスが割れたり、外壁に大きなへこみを作ってしまう恐れがあります。そのため、もし雹が発生した場合は、建物に異常がないかをチェックすることが大切です。
雹による屋根への被害でまず挙げられるのが、強い衝撃により屋根が割れたり、穴が開いてしまうなどの破損です。
屋根の破損が起きてしまうと、破損によって生じた隙間から雨水が屋根内部に浸入してしまい、屋根内部の腐食や雨漏りに発展する恐れがあります。さらに、雨漏りはシロアリやカビの発生、建物の耐震性低下などの原因にもなり、建物に大きなダメージを与えてしまいます。
また、割れた屋根材が落下したり、強風で飛ばされてしまうと、通行人にケガを負わせたり、周りの建物や車など傷つけてしまう可能性もあるので大変危険です。
一般住宅の屋根に使われているスレート屋根や瓦屋根はひび割れを起こしやすい素材となるため、これらの屋根材を使用している場合は特に注意が必要です。
屋根のへこみは、ガルバリウム鋼板やトタンなどの金属屋根でよくみられる被害です。
金属屋根にへこみが生じると、そこからサビが発生したり、サビの進行によって屋根材に穴が開いてしまいます。そして、穴が開いた部分から雨水が入り込み、雨漏りの発生や建材の腐食などを引き起こします。
近年では、ガルバリウム鋼板を使用する住宅も増えてきています。軽量で耐久性にも優れている屋根材ですが、傷やへこみが起きやすいというデメリットもあるため注意しましょう。
破損やへこみが起きていないからと言って安心はできません。雹が屋根に当たることにより、表面の塗膜を傷つけてしまうケースもあります。
塗膜の剥がれや割れは、美観が損なわれるだけでなく、塗膜の劣化を進行させる原因にもなります。そして塗膜の劣化が進むと、屋根材を保護する機能や防水効果が低下して屋根材に雨水が染み込んでいき、やがて屋根全体の劣化や雨漏りが発生してしまいます。
また、塗料本来の耐久性が発揮できなくなり、塗膜の劣化スピードが早くなると、その分予定していたよりも早く塗り替えが必要になる可能性もあります。
棟板金とは、屋根の一番高い位置に取り付けてある金属製の部材のことです。屋根材同士の接合部を覆うように設置されており、雨や風が屋根内部に吹き込むのを防ぐ目的があります。
雹による棟板金への被害は、傷やへこみ、板金のズレ、塗膜の劣化などです。また、金属製の部材なので、傷やへこみが起きてしまうとサビの発生にも繋がります。
このような被害が及ぶと、屋根内部に雨風が吹き込んでしまい、最終的に雨漏りの発生によって建物全体にも多大なダメージを与えてしまいます。
棟板金は、頂上部に設置する部材なので紫外線や雨風の影響を受けやすく、その他の部材に比べて劣化が早い箇所となります。雨漏りの発生や屋根内部の劣化を防ぐうえで非常に重要な役割を担っているため、定期的な点検・メンテナンスが必要となります。
雹によって雨樋が破損したり、穴が開いてしまうケースも多くみられます。
雨樋は、屋根に降った雨水を地上に排水する役割を果たしています。もし雨樋が破損して正しく排水できなくなると、外壁に雨水が伝って内部に水分が染み込んでいき、外壁の劣化を早めたり、雨漏りを引き起こす恐れがあります。
さらに、屋根から雨が勢いよく地面に流されて泥が跳ね、それによりご自身の住宅や周囲の建物を汚してしまう可能性もあります。ご近所とのトラブルは大きな問題に発展するケースもあるので、屋根の破損などと併せてしっかりと修理することが大切です。
雹によって屋根や雨樋などが破損した場合は、その被害の大きさによって金額が大幅に変動します。修理方法と費用相場は次の通りです。
屋根の葺き替えとは、古くなった屋根材や防水シートなどをすべて新しいものに交換する工法です。雹被害によって雨漏りに発展している場合や、既に屋根のカバー工法を行ったことのある場合は葺き替えを行うのが一般的です。
葺き替えの費用は、屋根の大きさや使用する屋根材などによって大きく異なり、一般的な戸建て住宅で100万円~300万円程が相場です。スレート屋根やガルバリウム鋼板は比較的、低価格で工事を行えますが、瓦屋根の場合は高額になる可能性があります。
屋根のカバー工法とは、古くなった屋根材をそのまま残し、屋根の上から新しい防水シートや屋根材を被せる工法です。雹により屋根全体に破損やへこみなどがみられる場合は、費用を抑えて屋根リフォームができるカバー工法で対応します。
カバー工法にかかる費用も葺き替えと同様に、屋根の大きさや使用する屋根材などによって変動し、70万円~200万円程が相場となります。また、新たに被せる屋根材は軽量なものに限られるため、ガルバリウム鋼板やアスファルトシングルなどを採用することが多いです。
塗膜の剥がれや軽度のサビ程度であれば、塗り替えによるメンテナンスが可能です。塗装する際は、古くなった塗膜とサビをしっかりと除去してサビ止めを塗布します。
棟板金に破損や穴あきが発生していたり、サビが広範囲に広がり劣化が激しい場合は、棟板金そのものを新しいものに交換する必要があります。
修理にかかる費用は棟板金の長さによって異なりますが、塗装が5万円~10万円、交換は7万円~25万円程が相場となります。また、棟板金の内部にまで雨水が浸水している場合は、貫板と呼ばれる下地材の交換も必要になるため、さらに金額が高くなる可能性があります。
雹による被害が部分的なものであれば、破損や穴が開いている部分のみ交換することが可能です。ただし、破損や穴あきが広範囲に起きている場合は、雨樋全体の交換を行わなければなりません。
雨樋の修理費用は規模や形状などによって変動しますが、部分交換であれば数千円~1万円、全体の交換は10万円~30万円程が相場です。
火災保険は火災による損害だけでなく、自然災害によって建物が損害を受けた場合でも適用されるため、雹による被害も火災保険を使って修理できる可能性があります。
例として、次のようなケースは火災保険が使用できる場合があります。
・屋根に雹が当たって屋根材が割れた
・雹が当たって瓦が落下した
・棟板金に雹が当たって変形した
・雨樋に雹が当たって穴が開いた
火災保険が適用されないケースとして、次の3点が挙げれます。
■経年劣化による破損
火災保険は、火災や自然災害による損害が対象の保険のため、経年劣化による破損は補償の対象外となります。
また、実際には雹が原因の破損の場合でも、保険会社の調査によって経年劣化と判断されれば、残念ながら保険金を受け取ることはできません。
■軽度な損傷
保険会社によっては雹による被害だとしても、軽度なへこみや傷などで機能自体には問題がないと判断され、火災保険の適用外とみなされる可能性があります。
■工事金額が免責金額に達していない
火災保険を利用する場合は、工事にかかる費用を全額補償してくれるわけではなく、保険に加入者しているご自身も一定の金額を支払う必要があります。この金額を免責金額と言い、一般的には20万円に設定されています。
例えば、工事金額が50万円、免責金額が20万円の場合では、保険会社が補償する費用は最大でも30万円ということになります。
もし工事金額が免責金額を下回っていると火災保険の適用外となる可能性があるため、設定している免責金額や契約内容を事前に確認しておくようにしましょう。
おおまかな火災保険の申請方法は、次の通りです。
1.保険会社(代理店)に連絡をし、申請書類を入手して記入する
2.修理業者から保険金の請求に必要な書類をもらう
3.保険会社による現場調査・審査
4.申請の結果の連絡が来る
火災保険を使って修理をしたい場合は、修理業者にもその旨を伝えておくと、書類の準備や手続きがスムーズに進みます。
申請から結果が出るまでは約2週間程ですが、大規模な災害の場合などはさらに時間を要するケースもあります。申請の結果、保険金が下りることが確定してから修理業者と契約を交わし、工事を開始します。
火災保険を利用する際は、次の点に注意が必要です。
■火災保険の申請は被害が起きてから3年以内
火災保険が申請できるのは、被害が起きてから3年以内と定められています。3年以上経過した被害は、保険の適用外です。
注意点として、時間が経ちすぎると自然災害による被害なのかが特定しにくくなり、保険会社側に経年劣化が原因と判断されてしまう可能性があります。そのため、保険金を受け取れる確率を上げる為にも、できるだけ早めに書類を揃えて申請することが重要です。
■必ずしも保険金が下りるとは限らない
雹による被害だからと言って、必ずしも保険金が下りるとは限りません。また調査の結果によっては、申請した金額の一部しか保険金を受け取れないケースもあります。
そのため、工事を開始するのは、受け取れる保険金額が確定してからにしましょう。確定前に工事を始めてしまうと、「保険金が下りると思って工事を始めたのに、保険金が下りずに全額自己負担になった」という状況になりかねません。
■火災保険を悪用する業者
火災保険を利用して詐欺行為を働く悪徳業者もいるため、注意が必要です。
例えば、調査の際にわざと屋根材を傷つけてお客様に写真を見せ「火災保険を使って修理できます」などと言い契約を取ろうとしたり、「保険金が下りなかったので契約を破棄したい」と伝えたときに、高額な違約金を請求してくるような業者もいます。
前述したように、保険金は必ず受け取れるわけではないので、このような悪質な詐欺に引っかからないようにする為にも、修理業者と契約を交わすのは申請の結果が出てからにしましょう。
火災保険の詳しい条件や申請方法についてはコチラ
⇒「火災保険を使った屋根修理」
雹は屋根材の割れやへこみ、棟板金の破損、雨樋の穴あきなどといった被害を及ぼします。屋根や屋根周辺の破損は雨漏りの原因となる可能性が高いため、雹が降った後は専門業者に点検を依頼して詳しく見てもらうと安心です。
修理費用は被害規模や屋根材の種類などによって大きく異なり、雨樋の部分的な交換程度であれば数千円~1万円程ですが、屋根全体に破損がみられる場合や雨漏りに発展している場合は数百万円かかるケースもあります。
雹による損害は火災保険を使って修理できる可能性もあるため、できるだけ費用を抑えたいという方はご自身が加入している保険内容を確認しておき、もし雹被害を受けた時は早めに保険を申請するようにしましょう。
屋根の破損を放っておくとシロアリの発生や耐震性の低下などに繋がり、さらに状況が悪化すると修理費用もどんどん高額になっていくため、まずは早期に対処することが大切です。もし小さなことでも気になる点がある場合は、ぜひ弊社までご相談ください。